公演情報
チェルフィッチュ×金氏徹平
消しゴム山
作品概要
人間のスケールを脱し、世界を見る目を更新する演劇
人、モノ、時間、空間、言葉が、未知のすがたで現れるーー
演劇という人間のための営みを通して、人間とモノ、それらを取り巻く環境とがフラットな関係で存在する世界を生み出すことはできるだろうか。
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市。津波被害を防ぐ高台の造成工事は驚異的な速度で風景を人工的に作り変えつつあった。岡田利規がその光景を目撃したことから構想された「人間的尺度」を疑う作品は、彫刻の領域を拡張し続ける美術家・金氏徹平をコラボレーターに迎え『消しゴム山』として実現した。無数にモノの並ぶ空間で俳優はモノと新たな関係を構築し、それを目撃する観客もまた、世界を新たな目で見ることになる。
ステートメント(2019年初演時)
直接の届け先が人間の観客ではない演劇。モノとの演劇。用いられている尺度が人間のそれではないのかもしれない演劇。観客との関係に人間でも人間のためのものでもない何かが介在している演劇。人間が描かれる対象の中心でも特別な存在でもないことをはっきりやる演劇。モノのための演劇。モノの演劇。人間ではないものによってその世界が描かれているのかもしれない演劇。人間の人間による人間のための演劇というのからさらに先へとその描く対象の梢、機能の梢を伸ばした演劇。
岡田利規
演劇において、ここではない場所、いまではない時間、と言う時に、その範囲を全く想像もつかないようなところまで拡張することが可能なのか?自分に向けられていないと感じるモノとどのように同じ空間にいることができるか?自ら自分を半分消してしまうことができるのか? モノはそれぞれに固有の時間を持っていて、人間はそれらとの間に、関心/無関心、寛容/不寛容を使って関係/無関係を作らなければならない。ある意味での劇場という仮想空間に構築する新しいランドアートのようなものを構想している。もしくは“映像演劇”に対する“彫刻演劇”への展開と言えるかもしれない。
金氏徹平
プロフィール
作・演出
岡田利規
その手法における言葉と身体の独特な関係が注目され、2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞、同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。2013年に演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』(河出書房新社)を刊行。
2016年からはドイツの公立劇場レパートリー作品の作・演出も継続的に務める。2020年『掃除機』(ミュンヘン・カンマーシュピーレ)および2022年『ドーナ(ッ)ツ』(ハンブルク、タリア劇場)でベルリン演劇祭(ドイツ語圏演劇の年間における“注目すべき10作”)に選出。
タイの現代小説をタイの俳優たちと舞台化した『プラータナー:憑依のポートレート』で第27回読売演劇大賞・選考委員特別賞を受賞。能のナラティヴの構造を用いた『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(KAAT神奈川芸術劇場)で第72回読売文学賞・戯曲・シナリオ賞及び第25回鶴屋南北戯曲賞受賞。2021年には『夕鶴』(全国共同制作オペラ)で歌劇の演出を手がけた。
小説家としては、2007年に『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)を刊行。第2回大江健三郎賞受賞。2022年に『ブロッコリーレボリューション』(新潮社)で第35回三島由紀夫賞および第64回熊日文学賞を受賞。
セノグラフィー
金氏徹平
既存の事物を収集し、オルタナティブな価値や視点によって再構成するコラージュ的手法を用い、彫刻を中心とし、写真、映像、舞台美術、パフォーマンスなど多様なメディアにより作品を制作する。 一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求している。主な個展として「S.F.(Something Falling/Floating)」市原湖畔美術館(千葉、2022)、「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川、2016)、「Towering Something」Ullens Center for Contemporary Art(北京、2013)、「溶け出す都市、空白の森」横浜美術館(神奈川、2009)など、その他、国内外での多数の展覧会に参加。「家電のように解り合えない」あうるすぽっと(東京、2011)に始まり、岡田利規、チェルフィッチュとのコラボレーションも多数。『tower (THEATER)』(ロームシアター京都、KYOTO EXPERIMENT 2017)では、自身の映像作品を舞台化した。
現在、京都市立芸術大学美術学部彫刻科准教授。
金氏徹平HP:https://teppeikaneuji.site/
出演
青柳いづみ
チェルフィッチュ、マームとジプシー両劇団を平行し国内外で活動。
漫画家・今日マチ子との共著『いづみさん』(筑摩書房)発売中。
朗読で参加している詩人・最果タヒの詩のレコード『こちら99等星』(リトルモア)、K-BALLET オプト×最果タヒ『シンデレラにはなれない』配信中。
出演
安藤真理
2006年兵庫のAI・HALLにて岡田利規ワークショップ&パフォーマンス「奇妙さ」に参加。以降、2008年「フリータイム」、2009年「記憶の部屋について」(金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」)、「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」、2011年「家電のように解りあえない」、2016年「部屋に流れる時間の旅」ほかに出演。西山真来監督「手と心が一致していない」出演。
出演
板橋優里
1993年宮城県生まれ、仙台市在住。近年の主な出演作品は、チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション(2017〜2019)、ぱぷりか第4回公演『きっぽ』(2018)、美術手帖×VOLVO ART PROJECT 小田尚稔の演劇『善悪のむこうがわ』(2019)、チェルフィッチュ×金氏徹平「消しゴム山」、「消しゴム森」、「消しゴム畑」(2019〜2021)、太田信吾監督「想像」(2021)、木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』(2023)。
出演
原田拓哉
1981年大阪府生まれ。 嵯峨美術短期大学卒業。
出演
矢澤誠
1972年、福島県生まれ。フリーランスで活動している。これまでに、NODA・MAP、宇宙レコード、ニブロール、カムカムミニキーナ、安藤洋子プロジェクト、遊園地再生事業団、カンパニーデラシネラ、オフブロードウェイミュージカル『リトルショップ・オブ・ホラーズ』などに出演。チェルフィッチュには『私たちは無傷な別人である』、『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』、『リビングルームのメタモルフォーシス』などに出演。
出演
米川幸リオン
1993年生まれ。三重県鈴鹿市出身、京都市在住。京都造形芸術大学映画学科俳優コースと映画美学校アクターズコースを卒業。これまでチェルフィッチュ/岡田利規の作品には、『三月の5日間』リクリエーション、『消しゴム山』/『消しゴム森』、市民と創造する演劇『階層』、『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』に出演で参加。その他の出演作品に、小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』、カナリアーズ『ガガたち』、東葛スポーツ『相続税¥102006200』など。 また主に映画において自身での創作活動も行なっている。近作に『あっちこっち、そっちどっち』、『(あるいは)限界ニュータウン』、『つちのちのちうち』など。
チェルフィッチュ
岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。2007年クンステン・フェスティバル・デザール(ブリュッセル、ベルギー)にて『三月の5日間』を上演、初めての国外進出を果たす。以降、アジア、欧州、北米、南米あわせて90都市以上で作品を上演し続けている。フェスティバル・ドートンヌ・パリ(フランス)、ウィーン芸術週間(オーストリア)など世界有数のフェス ティバル・劇場の委嘱および国際共同製作による創作も多数。 近年は、スクリーンに投影された映像が人の感覚に引き起こす作用によって展示空間を上演空間へと変容させる試み〈映像演劇〉を舞台 映像作家・山田晋平氏とともに始動、2018年に演劇公演/展覧会『渚・瞼・カーテン チェルフィッチュの〈映像演劇〉』(熊本市現代美術館)を発表。 2021年からは、「ノン・ネイティブ日本語話者との演劇プロジェクト」を始動し、日本語を母語としない俳優を対象としたワークショップを実施、2023年に演劇作品『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』を発表。